3月12日―1930年のこの日、ガンジーはダーンディー海岸まで塩の行進をスタートさせ、1947年にはトルーマンが「トルーマン・ドクトリン」を発表した。向かい風にカウンターで立ち向かうにはもってこいの日なのかもしれない。
私的な事情でこの冬はあまり山に行けず、運動不足で堆積したもやもやを取り払うべく残雪期の那須へ。東北道を那須インターで下りて大丸駐車場まで。そこから朝日岳東南稜を目指す。那須は火山岩質で岩が脆いため、その岩が凍っている冬期~残雪期のみ登攀に適したルートとなっている。
駐車場から峠の茶屋を経て取付点を目指す。途中にある鳥居は雪の下に埋もれ、上部を僅かに地上に残すだけとなっていた。鳥居の上部に手を合わせ、道中の無事を祈念して登山開始。快晴とはいえ、この日の気温は登山口でマイナス6℃。登山口からアイゼンを付け、トレースのしっかりついた樹林帯を歩く。
高山植物の看板から明礬沢へ下り、陽のあたる岩稜を登り返す。今年は雪が少ないため、アイゼンの刃が直接岩に刺さって登りづらい。前述の脆い岩質も相俟って、ここからピークまでの歩行は難儀した。
ギャップと呼ばれる核心部を懸垂下降&登り返し。時期や条件によってはロープを使わない人もいるそうだが、最大で風速40m超ともいわれる那須の強風に煽られ、このポイントだけロープを使った。そこからのリッジや山頂直下のスラブも雪は少なく、日陰に所々残る雪をわざと踏みながら進む。
スタートから3時間半ほどで山頂に到着。ぐるりを囲む展望は素晴らしく、日光連山から尾瀬、会津の山々まで全て見渡せた。一般道に合流して下山、剣ヶ峰はデブリが散見されたため、トラバースを避けてピークを越えていく。ここから避難小屋までの間が最も風が強かったのだが、どの程度の強さなのか、全体的に風の陰となる東南稜を登っているときは予見しづらいため、初心者のみで行く際は注意が必要。